琉球大学は元々地域貢献をミッションとしており、
原点回帰した大学です。


 この度(令和5年4月)、地域貢献担当の理事・副学長(地域連携推進機構長)に就任いたしました福治友英(ふくじ ゆうえい)と申します。

 皆さんご存知のように、琉球大学は、米国ミシガン州立大学の支援により1950年に設立いたしましたが、ミシガン・ミッションの根底にあるLand-Grant University(土地供与大学)の精神がビルトインされていました。

 その精神とは、これまでのアイビーリーグの大学とは異なり、大学を特権階級から一般市民のもとに解放し、カリキュラムについても特権階級に箔を与えるものとしての論理的な学問中心のリベラル・アーツ(自由七科)から、実践的な学問中心のカリキュラムへと、ArtsからScienceへと移行した、世界の大学の歴史にとっては画期的なものでありました。また、このことにより、求める人材像も、南北戦争で荒廃した米国の一定地域(州)を復興するための人材を養成するという地域貢献をミッションとする大学でありました。その後、第二次大戦後のスプートニック・ショックで、いくつかの州立大学は研究大学へと変革しましたが、この精神は、州立大学システムの中で今でも脈々と生き続けられています。

 翻って、琉球大学を見てみると、太平洋戦争において唯一我が国で地上戦が展開され、沖縄の地が荒廃した中で、聖地である首里城の土地が供与され、沖縄の復興を果たすための地域人材を輩出するための実践的なカリキュラムを構築して、設立されたものであります。

 本土復帰とともに、国立大学となり、地域貢献の精神は、一旦はなくなりましたが、国立大学の法人化や、北から南まで金太郎飴のような国立大学の在り方に対する批判或いは機能分化の政策等により、再度、地域に貢献する琉球大学として生まれ変わりました。私はこれを、琉大ルネサンスと密かに呼んでいます。

今まで以上に世界標準の、国際通用性のある人材輩出を目指します。

 今後は、沖縄振興と軌を一にして、単なるインフラ整備や経済の発展をお題目とせず、沖縄の振興を担う人材を輩出する機関として、また、地域の課題を解決するブレーンとしてのアクティブ・シンクタンクとして、地域から頼れる機関としてなるべく、この大学を運営することに尽力したいと思っています。

 そのためには、大学において、単に知識や技能だけを身に付けさせる教育を展開するのではなく、OECDが提唱するコンピテンシー(2003年DESECOプロジェクト報告によるコンピテンシーの定義:単なる知識(knowledge)や技能(skills)だけでなく、心理的、社会的リソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる能力)を身に付けた人材を輩出することが重要だと思っております。またOECDにおいては、AIやロボットが人間の能力を超え、現在の職業の半分を席巻する時代がやって来ることなどを見据えて如何に教育を展開していくか、ということに対しても「Education2030」プロジェクトにおいて、コンピテンシーの再定義を進めており、このことは、琉大トランスフォーメーション(RX)やリジリエンスな人材育成にも影響を与えるものと認識しているところです。

 これらのことを踏まえ、地域連携推進機構で展開する事業においても、このことを意識して進めて参りたいと思っております。
 皆様方の、ご意見、ご指導、ご理解、ご協力を賜りたいと存じます。

ー 地域貢献担当 理事・副学長(地域連携推進機構長) 福治 友英